令和2年4月1日に民事執行法が改正されました。
大まかにいうと
①財産開示手続きの見直し
②第三者からの情報取得手続きの新設
になります。
①財産開示の手続違反の罰則の強化
不払い親を裁判所に出頭させ,どのような財産を持っているかについて開示させる手続です。
これまでも制度としてはありましたが、罰則が軽く、あまり実効性がありませんでした。
違反の場合は,6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑事罰)になります(改正法213条1項6号)。
これまでは,申立てをするのに必要な債務名義の種類が限定されていて(例えば公正証書を作成し養育費の支払いについて定めていても,財産開示手続を利用することができなかった)
今回の改正で債務名義の種類にかかわらず,財産開示手続の申立をすることが可能とされています(改正法197条1項柱書)
②第三者(弁護士など)からの情報取得手続の新設
今回の改正で,新設された手続です。「改正法204条以下」
第三者からも,債務者の財産の情報を得ることが可能になりました。
裁判所から市町村や年金事務所に照会をして不払い親の現在の勤務先を調べることができます。
住民税や厚生年金のデータをもとにするので、不払い親が転職していても確実に現在の勤務先がわかり、給与 ・退職金・年金から天引きで養育費を確保できます。
また、この「第三者からの情報取得手続」により裁判所から銀行の本店に情報照会をして、銀行口座がどの支店にあるのか調べられるようになり、たとえ別支店に口座を作り変えても差し押さえが可能になりました。
★残された課題
①周知の不徹底
せっかく改正されたのに、「わざとでは無いか?」と思うほど周知されてません。
母子家庭の貧困率が50%を超えているにも関わらず、TVで制度改正のCMを流すこともなければ、役所にも「養育費の不払いは犯罪になる」とは一切掲示されていません。
② 協議離婚の場合は「執行認諾文言付き公正証書」が必要
「円満離婚だから」と、文章を残さず口約束で養育費を決めたり、公正証書を作ったものの「執行認諾文言」を入れていなかったりすると、養育費が不払いになっても「第三者からの情報取得手続」は利用できません。
しかし、DVやモラハラでの離婚の場合「とにかく別れる」ことが優先になり公正証書を作ることすら困難です。
また事実上別居していても相手方が離婚に同意しないケースや、最初からシングルマザーのケースもあり、まだまだ事実上の「逃げ得」が放置されています。
★改正民事執行法は2020年4月から施行されますが、その日以前に離婚していた場合の養育費未払いにもこの制度は利用できます。
調停離婚した方、協議離婚で「公正証書」を作成していた方は弁護士によっては未払い養育費が戻ってくる可能性があるかもしれません。
原則として養育費の支払いが認められるのは、養育費を請求した時点以降(これも問題。子供を抱えて働いてると弁護士を立てる余裕もありません)で、「過去に遡って請求」が認められないことがほとんどです。
なるべく早く弁護士に相談して対応を検討されることをおすすめします。
※この内容は、いくつかの弁護士さんのサイトを参考にさせて頂きました。